

太陽光発電設備では「使用前自己確認」において、支持物や基礎の安全性確認が重要視されています。その中でも垂直荷重に対する耐力を確認する「押込み試験」について解説します 。
太陽光発電所の安全性を考えるうえで、パネルやパワーコンディショナ(PCS)の性能だけでなく、それらを支える構造面の安全性が極めて重要です 。近年、地盤条件の影響によって架台や基礎が沈下・傾斜・変形するといった事故が意識されるようになりました 。
使用前自己確認の対象は、原則として出力10kW以上2,000kW未満の太陽電池発電設備の新設や、支持物の一定の変更工事などです 。2023年3月の制度施行により、50kW未満の小規模な低圧案件も対象に含まれており、規模に関わらず適切な確認が求められています 。
なぜ押込み試験が重要なのか
押込み試験は、杭基礎などに対して下方向(鉛直方向)へ作用する力に耐えられるかを確認する試験です 。太陽光発電所では、設備自体の自重(固定荷重)に加え、冬場の積雪による荷重が基礎に重くのしかかります。
基礎に求められるのは、これらの荷重によって「沈下しない力」です 。地盤の支持力が不足していると、不同沈下によって架台が歪み、パネルにストレスがかかったり、最悪の場合は構造破壊につながったりするリスクがあります 。

押込み試験が必要になるのはどんな場合か
経済産業省の解釈資料では、支持物の基礎が杭基礎等で、設計において鉛直方向の支持力計算を行っているものが、抵抗力確認の対象となります 。スクリュー杭を採用した野立て太陽光では、実務上避けては通れない確認項目です 。
ただし、以下のようなケースでは、設計の合理性が説明できれば試験を省略できる場合があります 。
• 直接基礎(ベタ基礎など)を採用している場合
• 地盤調査結果に基づき、十分な安全率を持って設計された既製杭
• 十分な重量のコンクリートブロック等を用いる基礎形式
重要なのは試験の有無そのものよりも、地盤調査・設計・基礎形式の整合性が客観的に説明できるかという点です
押込み試験では何を確認するのか
押込み試験の目的は、設計時に想定した押込み方向の支持力が実際に得られていることを現地で確認することです 。
• 判定基準: 試験荷重を加えた際に、基礎の急激な沈下や異常な変位が認められず、設計で見込んだ許容支持力を満たしていること 。
• 一体的な評価: 試験単体ではなく、設計荷重の設定、地盤特性、支持物の構造とセットで評価する必要があります 。
<杭の載荷試験>について詳しく知りたい方はこちらのページをご覧下さい
現場での試験方法と記録
押込み試験は現場で以下のように実施されます:
- 杭に油圧ジャッキを設置
- 反力装置を設置
- 段階的に下向き荷重を加える
- 荷重ごとの沈下量(変位)を測定
ここで重要になるのが反力の取り方です。
実務では、反力装置としてバックホウを使用するケースが多いです。
バックホウの自重を利用して反力を確保し、ジャッキで杭を押し込むことで、比較的シンプルかつ迅速に試験が可能になります。

バックホウを使う場合のポイント
バックホウを反力に使う場合は、以下に注意が必要です:
• 機体が浮き上がらないよう安定させる
• 接地状態(クローラの設置)を確保する
• 試験荷重に対して十分な重量があるか確認
• 反力が逃げないよう支持位置を適切に設定
不安定な状態だと「正しい荷重がかからない」ため、試験結果の信頼性が落ちます
バックホウを反力装置として使用する場合は、その重量・設置条件が試験精度に直接影響するため、機種選定や設置方法も含めて記録に残しておくことが望ましいです。
単に試験結果だけでなく、
• 使用機種(クラス)
• 設置状況
• 接地状態
まで記録しておくことで、後からの確認や説明対応にも強くなります。
現場では、杭にジャッキや計測器を取り付け、段階的に下向きの荷重を加えて変位量(沈下量)を測定します 。
- 試験数: 原則として実物の基礎を用い、同一形式の基礎および地盤ごとに1以上、かつ全基礎数の0.5%以上が推奨されます 。
- 残すべき記録: 届出実務では「試験をした」事実だけでなく、以下の記録が重要です 。
- 試験箇所の位置図
- 試験前・中・後の写真
- o 荷重―変位曲線
- o 最大荷重と判定結果

押込み試験を軽視するリスク
JPEAの資料等では、地盤調査や載荷試験による裏付けがない基礎は、明確に問題例として扱われています 。
- 長期的な事業リスク: 20年以上の運用期間中、地盤の緩みや圧密沈下によって設備が傾くことは、発電効率の低下や修繕費用の増大を招きます 。この沈下は、ある日突然壊れるものではなく、
・架台の微妙な傾き
・ボルト部への偏荷重
・パネルの歪み
といった形で徐々に設備へダメージを与え、最終的には発電量低下や設備不良につながります。
そして厄介なのは、引渡し時点では問題が見えにくいことです。 - 品質のばらつき: 現場の地盤は一様ではありません。載荷試験によって品質のばらつきを評価し、必要に応じて設計へフィードバックすることが、確実な安全確保につながります 。

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まとめ
押込み試験は、単に「杭を叩く・押す」だけの作業ではありません。積雪や自重に対して基礎が沈まないことを証明し、地盤・設計・施工・記録を一本の線でつなぐ重要な工程です 。
発電所の新設や改修を検討する際は、後から慌てて試験を行うのではなく、地盤調査の段階から「どうやって押込み耐力を証明するか」を計画しておくことが、手戻りを防ぎ、長期的な安全性を担保する近道となります 。

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